スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

Sí o No

スペイン人に「映画に行かない?」と誘われ迷っていると

「Sí o No?(Yes or No)」と返答を急かされたので

「どっちでもいいよ」と答えた。 

すると「どっちでもいい?なんて投げやりな答えなんだ。行きたくないってこと?」

となんだか急に会話の雲行きが怪しくなっていくではないか。

私としては「別にどっちでもいいなぁ。行ってもいいし、行かなくてもいいし、あなたのお好きな方でいいよ」と言う親切ニュアンスを含んだつもりで「どっちでもいいよ」と言ったつもりなのだが、そんな私の小さな配慮には全く気付いてもらえない。

「行くか、行かないか」の問題が「行きたいのか、行きたくないのか」の問題へと変化していく。

 

 

映画に行く=「Sí」と返答する以外の時、スペイン人がよく使う言い回しは、

「Me gustaría ir pero...」(できれば)行きたい、けど、、、(以下行けない理由)

本当は、できれば、可能なら、行きたい、けど、とやたらと相手を気遣った言い回しで長々と理由を述べるのであるが、要は「No」である。

映画には「行けない」もしくは「行きたくない」のだ。

行けないわりに「あぁ~映画かぁ。とてもいいアイデアだね!最近行ってないから行きたいんだけど~、その日はおばあちゃんの家に行くから行けないんだぁ」などと言う。

文の前半がかなり好意的なので「Sí」なのだなと喜びもつかの間、

「pero」だけど~の一言で見事に逆転してしまう。

思わせぶりぶり攻撃だ。「どっちでもいいよ」はダメなのに、思わせぶりぶり回答はいいなんて。

 

それにしても「Sí o No?」はスペインでよく聞くフレーズだ。

「Yesか Noか」「白か黒か」グレー好きの日本国民にはなかなかハードな二択。

比較的好き嫌いのはっきりした性格の私でもたまに面倒くさい。

しかし、「Sí o No?」の模範解答が「Sí」又は「 No」ではない場面が多々ある。

特に注意しなければいけないのはNoと言いたい時だ。

Noの場合には代案もしくは行けない理由を一緒に提示しなければならない。

Noの一言だけではダメなのだ。

 

「卒業式で泣かないと冷たい人と言われそう」と斉藤由貴は歌っていたが、スペインでは「No」と一言で断ったら冷たい人と言われる。

誘いを断るときはなるべく「No」などと一言ではっきり断るのではなく、例え嘘であっても「本当は行きたいのに残念」と言うのが大人の付き合いと言うものらしい。

図太い神経の人々だと思っていた(はい、思いっきり偏見です)のだが、意外と繊細な国民なのだ。

「忖度」は日本だけの専売特許だと思ったら大間違いであった。

 

しかし「No」や「どっちでもいいよ」がダメなのではなく結局のところ、短い返答がダメなだけらしい。

会話や議論が大好きなスペイン人にとって「No」や「どっちでもいいよ」だけの短い返答はまるで会話の強制終了となり、これから会話を楽しもうと構えている目の前でガラガラとシャッターを下ろす行為に値する。

しかも根っからの話好きな人々なので会話が一言で終了するような状況に慣れていない。あーでもない、こーでもないと色々会話を楽しみたいのだ。

多少 面倒だが断る時はしっかりNoと言いつつも相手を傷つけない配慮を忘れずに!

 

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tokiotamaki.hatenablog.com