スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

お約束

スペイン人との挨拶の時、「元気?」と聞かれたら「元気」と答える。

 

「押すな!押すなよ!」と言っている上島竜兵を水に落とすのと同じくらいのレベルのお約束だ。

 

¡Hola! ¿Qué Tal?  ¡Hola! ¿Cómo estás? 「元気?調子はどう?」

Muy bien, ¿y tú? 「とてもいいよ(元気だよ)。君は?」

これはワンセット。

 

この時、「普通」だとか、「まぁまぁ」などと答えてはいけない。

「お疲れ様でした」と言ったのに「大して疲れてないよ」と返してくる上司ぐらい面倒くさい。

 

親しい友だちなどに本気で話を聞いて欲しい時を除き

「元気?」と聞かれたら「元気」で返す。

「元気」以外の返答をするとスペイン人は必ず

「どうしたんだ?」「何があったのだ?」と聞いてくる。

元気じゃないと言った人に対して黙って見過ごすことが出来ない人種らしい。

 

元気じゃないと言った人には気遣わなければいけない,

と子供の頃から教育されているのだろうか?

 

本音と建前を使い分けるのが得意なはずの日本人の私だが、初めの頃はよく

「普通」とか「まぁまぁ」などと必要もないのに毎回正直に答えていた。

毎日「元気いっぱい」なわけがない。

 

ひねくれものなので「希望に満ち溢れ、楽しくてしょうがない」状態でない限り

「元気」と答えるのはどうしたものかと思っていたのだ。

しかし、毎回毎回「どうした?」と聞かれるのが面倒になり、

ついには何も考えず「元気」と答える習慣が付いた。

 

この条件反射とも思えるお約束の会話のやり取りは他の場面でも多々見られる。

 

例えば、誰かが家族の写真を見せてきた時は

「綺麗だね」「かっこいいね」「かわいいね」などと褒め称えなければならない。

さらに、子供の写真に関しては100%ポジティブなことを言わなければならないのだ。

日本の社交辞令の十倍大げさに言った方がいい。

この時どんなに心で不細工だななどと思っても口にしてはいけないのである。

 

褒め称えるポジティブ発言はどんな場面においても言って損はない。

だいたい褒められて嫌な気分になる人なんていない。

スペインでは子供はいくつになっても母親を「綺麗だ」と褒める。

 

Guapo/Guapa (グァッポ、グァッパ)はスペインでとても良く口にする褒め言葉だ。

男性には「かっこいい」、女性には「綺麗」という意味になる。

恋人同士はもとより、友だち同士でも言い合う。

インスタに写真を上げれば皆 Guapo/Guapaの嵐。

 

本当にいい国だ。

 

あまりにも日常的に綺麗、綺麗と言われるので私みたいな人間は注意が必要だ。

日本で一生かかっても言われない量の褒め言葉を日常的に浴びてゆくと人間は調子に乗っていく。

 

海外に行って勘違いしてゆく日本女子がたくさん存在するのはきっとこのせいだろう。