スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

カップル行動

スペインでスペイン人彼氏と暮らしていた頃のある昼下がり、週末の予定を彼氏に聞かれたので「夕方にMちゃんと会う約束してるんだ!」と答えると「そっか!いいね!」とあっさり会話が終了した。

ふっ!これで土曜日は思う存分日本人のMちゃんと日本語で話し倒せる!

日本語で心おきなく話せる時間と言うものは私にとってスペインで生活する上でご褒美みたいな贅沢な時間だった。

 

そして約束の週末になり、いそいそと出かける準備をしていると彼氏が

「今日何時だっけ?」と聞きながら身支度を始めた。

若干嫌な予感が漂うが素知らぬ顔で「どこかに出かけるの?」と聞いてみると

「Mちゃんと会うって言ってたじゃん」と行く気満々。

嫌な予感というのはなぜこんなにも的中率が高いのだろう?

 

あぁ、あぁ、あぁ、やっぱりそーきたか。私が悪かった。

きちんと説明しなかった私が悪うございました。

「Mちゃんに会うのは私だけ、私はMちゃんと二人きりで会いたいのだ」ときちんと言わなかった私が悪かったのでございます。

いや、いや、まてまて。そもそもなぜ説明しないといけないのだ?

Mちゃんは日本人だし、私の友だちじゃないか!

「私の友だちと会って楽しい?」と少々意地悪な質問を投げかけると

「何を言っているんだい!君の友だちは僕の友だち!しかもMちゃんはスペイン語がとても上手なんだから君は通訳する必要もないから大丈夫!」と返答される。

 

「友だちの友だちは皆友だち」とタモさんに耳元で説得されているかのようだ。

「世界に広げよう友だちの輪」と言われれば条件反射で「!」と続けてしまうが、違う違う!そうじゃ、そうじゃなーい!

そもそも私はMちゃんとスペイン語で話したくはないんだよ、日本人同士なんだから日本語で語り合いたいのだよ。

しかも語り合いたい内容の半分はおまえさんへの愚痴なんだよぉぉぉぉ、と心の中で絶叫する。

 

日本語で愚痴が言えるとか、日本のニュース(ワイドショーネタ)の感想を言い合うとか、昔見たCMの話とか、そーゆーくだらないことを日本語で語り合う事がどんなに私にとって癒しとなるか、おまえさん知っているのかい?

「僕だってMちゃんに会いたい!」だとぉ~このやろぉ~!黙れ黙れ!!!

 

私はスペインの「カップルは一緒に行動する」という考え方が苦手だった。

スペインではカップルはセットで行動することがとても多い。

パーティーや結婚式はもちろん普段の友だちとの付き合いにもセットで参加する。

大勢での集まりやカップル同士の集まりなら別にいいが、私の彼氏は相手がたとえ一人でも気にしない。そして自分が必ず受け入れられるということを信じて疑わない強靭なポジティブ思考の持ち主であった。

見習うべきなのか、見習ってはいけないのか判断に迷うところだ。

カップルだからといって誘われてもいないのについてくるのはいかがなものかと思うのだが、私の彼には通用しない。

 

「だって僕たちはカップルなんだから一緒に行動するのが当たり前だよ」とおっしゃるが、外国に一人でやって来たような女にそんなことを求めてはいけない。

 

しかし、結局、しかたがないので先に私がMちゃんと二人きりでお茶して、後から彼が合流してくるという事で話はやっとまとまった。

 

出来るだけ遅く来ればいいのにと心の中で思っていたことは内緒だ。