スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

揺れる床

日本でスペインでの生活などを友達に話す時、口にするのが恥ずかしくなる単語がある。「Discotecaディスコテカ」だ。

「ディスコ」の響きがやけに古めかしく、気恥ずかしさがこみ上げる。

40歳を過ぎた私ですら音楽に合わせて踊る場所というものはもう既に「ディスコ」から「クラブ」へと呼び方が変わっていた。「ディスコ」なんてバブル崩壊前の言い方だ。

しかし、スペインではそんな日本とは関係なく今も昔も「ディスコテカ」は「ディスコテカ」なのだ。

しかも、全く違う単語とか音ならいいが、「ディスコテカ」と言えば「ディスコ」のことなのだと容易に想像がついてしまうのもやっかいだ。ついついスペインに居た時の癖で「ディスコテカ」と言ってしまう自分が怖い。

しかし、スペインの「ディスコテカ」を「クラブ」と訳すのはどうにもしっくりこないので、少々気恥しいが「ディスコテカ」と言い続けさせてもらう。

 

日本の「クラブ」に比べスペインの「ディスコテカ」はもっと身近な存在だ。

「ディスコテカ」に一度も行ったことがないスペイン人はまずいないだろう。どんなに嫌いでも一度は通る道それがスペインにおいての「ディスコテカ」だ。たぶん日本でいうカラオケボックスのような存在だろう。

 

それにしても、音楽に身をゆだねて踊る行為を得意とする日本人はとても少ない。

私が見た限り日本人だけではなくアジア人全般的に不得意なのではないかと思う。音楽が聞こえてきたらそこがどこであろうと反射的に腰でリズムを取り思わずステップを踏んでしまう国の人々とはベースがまるで違うのだ。

 

スペインにはたくさんの中国人が暮らしているのだが、ディスコテカではあまり見かけない。そこで当時の同僚だった中国人のジンちゃんに中国人はスペインでディスコテカに行かないのか?と聞いてみた。

彼女曰く、普段はあまり行かないけど、年に一度中国人がディスコテカに集まる日があると教えてくれた。

それは、なんとクリスマスイブ!

スペイン人にとってクリスマスは家族で過ごすイベントのためその日のディスコテカにはスペイン人は来ないらしい。スペイン人の来ないクリスマスのディスコテカは中国人で一杯になるのだとか。(ジンちゃん情報なので裏は取れていませんのであしからず)

 

でもジンちゃんは「マドリードのディスコテカは踊れないから好きじゃない」と言っていた。人が多くて踊れないという意味だろうか?

「床があんなのじゃ踊れないわよ!」と言うジンちゃん。床の種類について文句を言うなんてもしやジンちゃんはその道のプロなのか?!と思ったがそうではない。

「私が中国で通っていたディスコテカの床は揺れるのよ!ダンスフロアの床はトランポリンみたいになっていて立っているだけで音楽に身を任せて踊っているみたいになるの!!!」

な、な、なんと!

踊れぬならば床をボヨンボヨンにして、さも踊っているかのように勘違いさせてくれる魔法の床にしてしまうとは!

ジンちゃんの説明では床が揺れに揺れるので面白くてダンスフロアに行くとみんな大笑いで上下に揺れているらしい。凄い発想だ。私ならお酒を飲んでそんな床の上にいたら速攻吐きそうだ。

「あの床ならガンガン踊れるのに~」というジンちゃん。果たしてそれは踊っていると呼べるのか?

「あの床じゃなければ踊れない」ということはほぼ全世界のディスコテカで踊れないということだぞ、ジンちゃん!

 

ジンちゃん、元気にしていますか?

ジンちゃんに会ったら揺れる床がなくても踊れるようになったか是非聞いてみたい。