スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

ロンドンのチャイナタウンとスペインの中華

マドリードに住んでいるとスペイン国内はもとよりヨーロッパ各地へ簡単で安く(日本から比べたら)旅行できる。マドリードからロンドンまで飛行機で約2時間半。なんという近さ!

そこで週末を利用しロンドンへ当時の彼氏と一緒に出かけた。

 

ロンドンで必ず行きたいところがチャイナタウンだった。

何故かというと、美味しいちゃんとした中華料理が食べたいからである!

スペインには正式なチャイナタウンがない。

スペインにもたくさんの中国人が暮らしているのだが、中華料理店が多く並ぶ界隈や中国商店がたくさんある地域などはあるものの、それは決して横浜中華街のようなものではない。

そして、スペイン各地にある中華レストランの中華料理はスペイン人向けになっていて本場のそれとは随分味が違う。

どこの中華レストランでも必ずある「Arroz frito tres delicias」これは五目チャーハンのことだと思うが、なぜか三目チャーハンになっている。しかも使っている具材はどうみても冷凍のミックスベジタブル。もうチャーハンではなくピラフだ。

 

しかし偉そうなことを言っているこの私も、本場の中国で中華を食べていないので実は横浜中華街も本場の人からすれば日本風の味付けとなっているのだろうが、それでもスペインの中華よりよっぽど本場に近いはずだ!

 

スペインで生まれ育ったため、中華料理と言えばスペインの中華レストランの料理だと思い込んでいる彼に、是非本場に近い中華料理を食べさせてあげたい!

これが私のロンドン旅行最大のミッションであった。

「食べ物がまずい」ことで有名なイギリスだが、逆にさまざまな人種が入り乱れる国際都市のため外国料理のレベルは高い。

自国の料理は天下一品にも関わらず、他の国の料理となると突然レベルが低くなるスペインとは真逆だ。

 

さっそく中華街へ向かうとそこはもう別世界。もうね、いちいちオシャレです。

ロンドンってやっぱり都会だわぁ~と感動。一応私たちもスペインの首都から来てるんですけどね、マドリードとは格が違います。

中華料理店だけでなく美味しそうな日本料理店もたくさんある。どこに入ろうか目移りしてしまう。

事前に調べていたレストランに入ると、オシャレな中国人ウェーター君が席まで案内してくれた。

失礼を承知ではっきり言うが、このレベルのオシャレ中国人をスペインで見つけるのはとても難しい!

ロンドンでたくさんの中国人を観察したが、みなさん垢抜けていらっしゃる!

残念ながらスペインに移住している中国人さん達とは決定的に何かが違うのだ。

スペイン人の彼もオシャレ中国人ウェーター君に「Hi!」と言われ、びびっている。

 

そしてついにスペイン中華以外の中華料理を初めて口にすると

「な、な、なんて美味しいんだ!今まで食べていた料理はなんだったんだぁぁぁぁ!」と感動する彼氏。よかった、ロンドンまでつれてきた甲斐があった。

「どうだ!これが本場の中華だ!まいったか!」と私はなぜか中国代表気分で得意げになる。

オシャレウェーター君にレベルの高い中華料理。彼の中で中国の株が急上昇で上がっていったロンドンの昼下がりであった。

 

実は、マドリードにも美味しい中華レストランは存在する。

火鍋は日本でブームになる前からマドリードで食べれたし、台湾系移民の友だちが教えてくれるレストランはいつも本当に美味しかった。

しかし、そんな美味しい中華レストランでもスペイン人たちがオーダーするのは定番のスペイン風中華だ。食べ物に関して保守的なスペイン人たちはなかなか知らない料理に挑戦しない。そのため、どんなに美味しい中華レストランでも一応定番のスペイン風中華のメニューが常備されている。

 

中華レストランで働く中国人が食べに来る(築地で働く人が食べに行く寿司屋みたいな)人気の火鍋店で食事をしていた時、中国人も日本人も火鍋を食べている横でスペイン人がArroz frito tres delicias(三目チャーハン)と春巻き(これもスペイン定番のやたらとキャベツが入っている巨大な春巻き)を頼んで食べていた。美味しい火鍋の横でなんとも残念なメニューだ。

 

あの彼がいつか火鍋にたどり着く日がやってくるだろうか?

 

しかし、あのスペイン風中華料理もスペインを離れた今となっては無性に恋しいスペインの味の一つとして私の記憶に残っている。