スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

2019年、夏

日本に完全帰国してからも年一回はスペインへ行っていたのだが、コロナのせいでここ2年スペインに行けていない。最後にスペインに行ったのは世界中が大騒ぎになる前の2019年の夏だ。

 

私が今働いている会社は夏より冬の休みが長いのでいつもは年末にスペインに行っていたのだが、その年は夏に行くことにした。

年末年始のスペインはクリスマスシーズンで楽しいのだが、やっぱり寒いスペインではなく暑い青空の似合うスペインが恋しかったのだ。しかも私はいつも友達に会いにマドリードとイビザに行くのだが、冬のイビザはびっくりするぐらい何もない。のんびりとしたイビザが大好きではあるが、ゴーストタウンのようなイビザしか知らないなんてちょっと変わっている。夏本番のこれぞイビザという人で溢れたイビザを見てみたい。夏のイビザを知らずしてイビザ好きと公言するのもいかがなものか!と熱い思いを胸に真夏の旅行に出かけたのだ。

 

今回はせっかくなのでスペインの他にポルトガルにも足を伸ばすことにした。

ポルトガルリスボンポルト、スペインのイビザ島とマドリードへの旅行。女3人現地集合現地解散の旅だ。3人とも東京に住んでいるのに現地集合なのは、それぞれの予定やらマイルやら大人の事情を考慮した結果だ。

到着時間もバラバラなら帰る日もバラバラ。リスボンポルトまでは3人でその後2人になりイビザにマドリードで私は帰国。友達はマドリードの後バルセロナに寄って帰国という三者三様の旅。

 

集合の地はリスボン

私にとってリスボンはこれで3回目だが、行く度に観光客が増量している。

今回は初めてリスボンから少し足を伸ばしてシントラという街まで行ってみた。ユーラシア大陸最西端のロカ岬や一風変わった建築様式のペーナ宮殿などが有名な街だ。

 

リスボンでも人が多いなと思っていたが、シントラはその倍人が多かった。街全体がディズニーランドのようにそこにいる人すべて観光客!バスも、宮殿に入るのにも行列。いろは坂並みにくねくね曲がる道を経てやっとの思いでたどり着いたロカ岬は霧に覆われせっかくの景色は台無し。大陸最西端の証明書を発行してくれる事務所とお土産屋以外何もないので次のバスを待ってUターンするというただの時間の無駄としか思えないロカ岬だった。しかし、旅にハプニングは付き物だ。晴れたロカ岬はそれはそれは素晴らしいのだろうが、霧のロカ岬だってそれなりに思い出になる。(と、強がってみる)

 

それにしても、何回来てもリスボンは素晴らしい。街がコンパクトで観光や散歩に適しているし、何を食べても美味しい。

リスボン最高!などとはしゃいでいたら、次に行ったポルトがもっと最高で驚いた。

ポルトポルトガルの北に位置するポルトガル第二の都市。日本ではポートワインで有名だ。

 

私はこの街にすっかり魅了されてしまった。街を散歩しながら「ここ、住める」と何度も思った。好きな街と住みたい街というのがあると思うのだが、ポルトは私にとって両方を兼ね備えている。ポルトに行ったことのある人ほぼ全員がポルトはいい所だったと言っていたのも納得だ。リスボンに比べて観光客がまだ少ないのも丁度良い。(とはいえ、ハリーポッターで有名な本屋さんは異常な混雑ぶりだったけど・・・)

 

そして旅は3人から2人になり私たちはイビザ島へ向かった。イビザの空港に着いて一番驚いたのは空港の活気だ。冬のイビザの空港は2、3軒のお土産屋しか営業しておらず、旅行者も少ないのでガラーンとしているのだが、夏の空港はまるで別世界!全てのお店がオープンしていて観光客も盛りだくさん。

なるほど。これが夏のイビザか。

冬には運行していないバスもたくさん走っている為、いちいち友達に迎えに来てもらわなくてもホテルまで行ける。そして冬はゴーストタウン化している地区にまでバスは走り、隅々まで人で賑わっているのだ。

常連客しか来ないと思っていた友達のレストランも夏は大繁盛で話しかける暇もなく、閉店後は疲れてぐったりしている。バスで見かけた地元の人らしき人達も連日のお仕事でぐったりしているご様子だ。夏のイビザの人々はとてもよく働く。冬は動きがゆっくりなのに夏はこうも機敏に動くのか!と感心してしまうほどだ。

 

活気のある夏のイビザにいると「あ~、私今バカンスを満喫している~!」と気分が上がるが、海で泳ぐことも怪しいパーティーにも興味のない中年女にとってはいささかもったいない感じもする。たくさんの人と音楽を聴きながら沈む夕日を眺めるチルアウトもよかったけど、人の少ない田舎っぽいイビザの方が私には落ち着く。

とは言え、本来のイビザを知ることが出来て大満足だ。もう思い残すことはない。

 

そしていよいよ最終目的地のマドリード。私の第二の故郷だ。

しかし、ここまでの旅でかなりの体力を消耗し疲労困憊。友達にもマドリードに入ってから明らかに顔が疲れていると指摘を受ける。私の愛するマドリードを全力で友達にプレゼンするはずだったのに、住み慣れた街に帰ってきた安心感で私は一気に腑抜けになってしまった。したがってマドリードで撮った写真の私は半目だったりしていて明らかにポルトガルの時のような生気は感じられない。しかも8月のマドリードは閉まっている店も多く観光客も少ないため「一足先にバカンスから帰ってきた地元民」のような気分になってしまい、もはや観光をする気力もなくなってしまった。

 

もしあの時、その後の世界が未曽有の惨事に見舞われ旅行すらできない世の中になることを知っていたら、もっときちんとマドリードを観光したのに。会いたい人全員に会っておけばよかったし、大好物も全部食べるべきだった。

「またすぐ来られる」と信じて疑わなかったのに、気が付けばもう二年も経ってしまった。

 

半目で過ごしたマドリードには若干後悔が残るが、それでも世界がまだ【ノーマル】だったあの夏にポルトガルとスペインで過ごせたことは本当に貴重だった。