スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

ジムの思い出

ウエートトレーニングやランニングのような一人で黙々とやる運動が苦手だ。

持久力がまるでないし、自分との闘いにあっさり負けるタイプなので続かない。

したがって長い間ジムには全く興味がなかったのだが、スペインではジムが人気で、私の周りでも通っている人が多く、ミーハーな私は例に漏れずジムに通うことにした。

 

私が通ったジムはダンスなどのクラスも豊富でゲイの方も多く通うおしゃれなジムだった。

暗闇バイクエクササイズのクラスがあったので覗いてみると、暗闇にミラーボールが輝き、爆音で流れる音楽の中みんなを煽るテンションの高いインストラクター。

スポーツとは健全なものという概念を覆す怪しい雰囲気の空間。

全員がハイになっている異様な状況は集団ドラックまたはカルト集団のようで、見てはいけないものを見てしまった感が否めない。

それでも好奇心には勝てず、窓に張り付いて中を覗いていると、先程ロッカールームで一緒だった女の子を発見。ブラックライトの中の彼女は15分前の彼女とはまるで違い、何かに取り憑かられたように力いっぱい自転車を漕いでる。

きっと明日は生まれたての小鹿のように足がプルプルして仕事にならないだろうな、と要らぬ心配をしつつ自分には向いていないクラスだなと早々に見限り隣のヨガのクラスへ移動した。

 

ヨガのクラスの先生は髭を長く伸ばした痩せたスペイン人で、「ザ!ヨガやってます」感が半端ないスペイン人版亀仙人のような先生だった。(仙人と呼ぶには若いけど)

「ナマステ~」と手を合わせて始まるクラス。

スペインで「ヨガをやっている」「禅に興味がある」「ベジタリアンヴィーガンである」人は日本が好きな確率がかなり高い。

この亀仙人先生も私が日本人だとわかった瞬間、目を細め温かい眼差しで私を見つめ、なぜか独りでうなずいていた。

 

ズンバのクラスは中南米出身のノリのいい先生だった。

陽気なラテン音楽に合わせて先生のフリを真似しながら踊るのだが、噴き出してしまいそうになるようなコミカルな動きがあったり、ストリップ劇場さながらの妖艶な下半身の動きがあったりとかなり独特な内容だった。

したがって毎回クラスは大爆笑。

しかし、笑いながら激しく踊るというのは意外に難しいのだ。笑うと余計に体力を使い息が上がる、そして生徒が笑えば笑うほど先生のテンションが上がりアドリブでまたわけのわからない振りを入れてくる。そしてまた笑う。これの繰り返し。さすがに一時間笑いながら踊り続けると汗だくになる。いい運動だ。

汗びっしょりでクラスが終わり、本来ならジムでシャワーを浴びて帰るところだが、このジムのシャワーが苦手で私は毎回汗だくのまま走って家に帰った。

なぜジムのシャワーが苦手かと言うと、うちのジムのシャワールームにはなぜか扉がなく、丸見え状態でシャワーを浴びなくてはいけない構造になっていたのだ。

横の仕切りはあるのに、扉はない。はずかしくて落ち着いてシャワーできない小心者なのでシャワーも浴びず走って家に帰るしかない。

近所のジムにして本当に良かったと思った。

スペインで日本の温泉の話をするとたまに「裸で入るの?」と嫌な顔をする人がいるのだけれど、今度そんな人に会ったら「シャワーの扉ついてないの?」と嫌な顔で応酬しようと心に誓った。

 

因みに、ジムはスペイン語でヒムナシオと発音するのだが、人の名前のイグナシオと似ている。

レストランの予約の電話を受けていた時、イグナシオさんから予約が入ったのだが、私はヒムナシオと聞き間違え、予約の表に「ヒムナシオ様2名」と記入していた。

同僚に「ヒムナシオ」って誰だよ!と突っ込まれたがヒムナシオと聞こえたのだからしょうがない。

 

これが私のジムにまつわるの思い出だ。