スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

日焼け

スペイン人にとって綺麗にやけた肌というのは美人や美男子の絶対条件とされる。

したがって老いも若きも日焼けが大好きだ。乾燥している気候に追い討ちをかけるように日焼けをする為、年々しわが増え、しみも多くなる。しみが目立たないようにさらに日焼けをする。。。

 

「白ければ白いほど美人の国、日本」からスペインにやってきた私だが、スペインに来る前から覚悟は決めていた。

スペインに行く前にいつもの化粧品店で「スペインに行っても流されず、負けずに美白を保ってください。」と言われたが、こっそりファンデーションをワンランク濃い目に変更して購入した。

郷に入れば郷に従えだ。スペインで美白など保てるはずがない。

 

実際スペインの抜けるような青空には日焼けした肌がよく似合う。

露出の多い洋服も、はっきりした原色の服もまるで日焼け前提でデザインされているようだ。国によって流行や美意識、美の基準というものは変わるのだ。

 

女性は体にフィットした服が多く、色もはっきりした色を好む。

日本の場合、全体的にボーとしたパステルカラーとかアースカラーが多いし体の線もあまり強調したりしない、そしてやたらと重ね着する。

免税店で働いていたときに、どの国のアジア人かを見極めるには服装を見れば大抵検討がついた。

中国人(本土の人)男性はスーツ、女性は一昔前の日本のバブルの服装。

台湾の人は日本人と似ているが、色が華やか。

韓国人はなぜか登山仕様のスポーツウエアで派手な色使い。おば様方はサンバイザーをかぶっている人が多い。

そして日本人のグループは遠くから見ると「ベージュ軍団」ベージュとかグレーの服に斜めがけポーチ、歩きやすい運動靴といった面持ちだ。

同僚に「最近の日本人はおしゃれじゃないね。バブルの時はみんな派手な服でおしゃれしていたけど、今じゃみんなベージュだらけ。」と言われたことがある。

「日本にいる日本人はもっとおしゃれだ!」と反論したけど確かにスペインに旅行に来るときの服装はさえない。

「石畳で歩きにくい。たくさん歩くので歩きやすい靴で。」とか「お金持ちに見えると泥棒に狙われる」とかさんざん脅されるので皆個性を消しているのだろうか?

でも旅行に限らず日本ではあまり派手な色の服が売っていない気がする。

お年寄りの服は地味な服が多くて残念だ。スペインでおばあちゃんが真っ赤なスーツなどを着ているのを見ると微笑ましくなる。

 

話はずれたが、「日焼けが好き」ということは「海も好き」なのである。

夏はみんな海へ行く。子供から年寄りまで水着をきて海で一日過ごす。

お年寄りが海へ行くのは普通のことなので、もちろんビックなサイズの水着もたくさん売られている。ビキニもあるし、色も柄もカラフルで素晴らしい。

日本の海でカラフルなビキニを着たセニューラを見かけたことなど一度もない私にとってこの光景は衝撃的だった。

スペインの夏の海にはスペイン人といわずヨーロッパ中の人々がビーチで日焼けを楽しむ。

ドイツ人風の大柄なお年寄りグループはトドの集団と見間違えそうになる迫力だった。

夕方には片面が真っ赤に焼けて痛々しい人もいてゲルマン民族には凶器になる日差しだなと思った。

スペイン人達は綺麗に日焼けするために夏前からの下準備にも余念がない為あまりそういった被害には遭わない。

夏前でも太陽が出ていれば上着を脱ぎ、公園の芝生の上や自宅のベランダで太陽を浴びる。

 

ヨーロッパの人々は日焼けというか日光浴が本当に好きだなと思う。

真冬でも太陽が差し込むと上着を脱ぎ太陽に顔を向ける。恍惚の表情で日を浴びるのだ。なので冬でもテラス席は意外と人気だし(タバコが吸えるというメリットもある)人間にも光合成が必要なんだということを教えてくれる。

 

綺麗に焼けた素肌はスペインにとても似合うが、日本に帰国した今となっては日焼けの代償のしみとの戦いの日々だ。

でも後悔はない。今またスペインに行ったとしても同じことをするだろう。