スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

普通とは

何を持って普通と呼ぶのか知らないが、昔は自分が普通の人間だと信じていた。

アパレル会社に勤めていたため、私の周りには個性的な愛すべき変人たちがたくさんいた。その中において自分はいたってノーマルで正常な一般社会人だと自負していたのだが、変人たちは

「変人たちの中で普通というのは変人、大多数の中の少数派なのだからマイノリティ!ということは、この会社においてはお前が変人とゆーことになる」と言ってくる。

「普通と思っている人間が一番怪しい。第一お前は自分が思っているほど普通の人間ではない!」と言われたが、それでも自分は普通の一般人だと信じて疑いもしなかった。

そんな私が29歳でスペインへ旅立った。

旅立ちを決めた時、元同僚に「やっぱりお前が一番変わってる」と言われた。

確かに普通の一般路線からは多少外れたなとは思ったが、スペインへ行ってみると私なんかよりはるかに変わった人がたくさんいた。

「スペインへ来る人って変わり者が多いな」とスペインへ行った人間が思う。

特にスペインで出会う日本人は「自伝書いた方がいいですよ」レベルの個性的な人々がたくさんいる。

滞在年数が長いければ長いほど、変わり者率が高くなる。(気がする)

 

スペイン在住の個性的な日本人の中でまた「普通の人間」に返り咲いたと思い込んでいた私だが、免税店で働き出すと日本からやってくる年配の旅行者から変人扱いを受けることになる。

 

年配の方々は「30代(当時)独身でスペインで働いている日本女子」という生物が理解できないらしい。

接客していると「結婚しているの?子供いるの?何でスペインで働いているの?」と、かなりずけずけ聞いてくる。

「独身です」と答えると「・・・あっ、そう」と期待を裏切られた顔を向けてくる。

これだけで終わればいいが「じゃあなんでスペインに来たの?」とか、「なんで結婚しないの?」など、それはまぁ無礼な質問を浴びせてくるのだ。

はっきり言って余計なお世話である。

なんで見ず知らずのおっさんに私の人生を語らなければいけないのだ!

しかし彼らが納得する答えは「スペイン人と結婚したので、スペインに嫁いできました又は旦那の転勤についてきました」

30代女子にこれ以外の正解はない。「語学留学に来ました」は20代しか言ってはいけない。なぜなら彼らの中では語学留学にも年齢制限があるらしいのだ。

「30代、独身、スペインで働く日本女子」は彼らの常識を超えた変人とみなされる。

変人扱いに疲れ果てた私は結局「結婚しています」と嘘を付くようになった。彼らの想像するスペインにいる普通の日本人を演じれば気まずい会話のやり取りをしなくて済む。

 

「苦労しているのが当たり前」前提で話をしてくる老人たちも困ったものである。

「(こんな所で暮らして)大変でしょう?」と聞かれ「全然大変じゃないです!むしろ楽しいです」と答えた暁には「へぇ~。あそう・・・」とうちの娘ではなくて本当によかったといわんばかりの表情で遠ざかってゆく。

辛いほど苦労しているならとっくの昔に日本に帰ってるわ!と思うのだが、お年寄りに歯向かう訳にもいかない。

彼らが思う「普通」に当てはまらないのだから仕方ないのだ。

 

ここまでくると、一体いつの時代のどんなイメージを抱いているのか聞いてみたくなるほどだ。

出稼ぎとか奉公とか?

あと話は変わるが、出身地を聞かれて「東京」と答えると微妙に嫌な顔をされる時が多々あった。特に地方のじいちゃんばあちゃんは自分から「日本のどこ出身なの?」と聞いてきたのにもかかわらず「東京」と答えると会話が強制終了されるのだ。

あれはなんだろう?東京差別だろうか?どこと言えば満足して頂けるのか是非聞いてみたい。