スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

スーパー

スペインで暮らすにあたり最初の難関はスペイン語の数字の聞き取りだと思う。根本的なスペイン語の問題とは別に独特な数字の言い方があるからだ。

料金の言い方は日本人には馴染みがない。

20.35eu€ の場合ヴェインテ コン トレンタイシンコ(20と35)となる。1€がだいたい120円ちょっとなので、1€以下(日本の120円以下)が「.」以降にくる。「.」をcon(コン)と言って前半と後半を分けて行ってくれる場合もあるが、スーパーのレジでは皆急いでいるのかcon を言わず続けて早口で言われることがある。

レジで焦っている時に早口で数字を言われると本当にわからない。料金表示がはっきり見えなかったり、動揺して見る余裕がなかったりだから聞き取るしかない。

でも初心者にはとても大変。例えば1.25€の場合、ウノ ヴェインティシンコ(いち、にじゅうご)。耳から取り入れて頭が翻訳している間にタイムラグが生じるため、頭に残るのは後半部分の数字。

1.25€だから5€札を出せば足りると思った矢先に、頭に残る後半の25という数字。ここで混乱する。えっ?5€じゃ足りない?そんなに高かったっけ?とりあえず20€札を恐る恐る出してみると、有無を言わさずレジのおばちゃんに手からもぎ取るように奪われ大量のお釣りを渡される。

手に握らされた大量のお釣りを見つめ、「やっぱりそんなに高いはずないよな。一体いくらだったんだろうか?」とレシートで確認して「1じゃん!1.25じゃん!またお釣りでお財布がじゃらじゃらになっちゃったよ!」と自己嫌悪。

いつになったら数字が聞き取れるようになるのだろうかと落ち込んで帰る帰り道。こんなことの繰り返しである。

 

数字問題とは別にひと時私を悩ましていた問題がある。

ある時、レジで買い物をしていると合計金額が5.22€だった。表示が見えるスーパーだったので金額を見た瞬間「あっ!財布の小銭が消費できるぜ!」と財布の中をのぞいていたらレジのお姉ちゃんに「5.20€」と言われた。

「???あれ?5.22€なのに今5.20€って言った???なんで?」私の財布には5.22€ピッタリ払える小銭があったのだが、レジのお姉ちゃんの言葉が引っかかり小心者なので念の為5.30€出してみた。すると0.10セントのお釣り。でもレシートの表示は5.22€。「こ、こ、これはおまけしてくれたってことか?それともお姉ちゃんが間違えているのか?いや。きっとおまけしてくれたんだ。」日本円に換算して約2円のおまけ。私は満面の笑みでお姉ちゃんにありがとう!!と言ってスーパーを出た。

 

で、別の日。レジには8.49€の表示。で8.50€出したら笑顔で受け取られレシートのみを渡される。「1円のお釣りは?この前2円おまけしてくれたから今日は逆に私から巻き上げるのか?」「外人だからなめられているのだろうか?」いまいち納得できないものの1円を勝ち取るほどの会話能力もないのでレシートを握りしめ敗北感を味わいながら家路についた。

 

現地の人に聞いてみたところ、「ここら辺の人は小銭をあまり気にしないのよ」とのこと。なので勝手に四捨五入をしたりするらしい。得する日もあれば損する日もあるけど、大した金額じゃないから誰も気にしないんだそうだ。

でもそーなるとスーパーのレジ閉めは一体どうなっているのだろうか?

レジ係の人が暗算で四捨五入のプラスマイナスを勘定しているとは全く思えない。

日本の銀行では一円でも合わなければ残業するなんて話も聞いたことがあるくらいなのに。このスーパーの人が毎日残業しているようには見えない。経営者は社員に何も言わないのだろうか?と勝手にスーパーの心配をしていたら

「レジ閉めで多少の誤差は日常茶飯事だから誰も気にしない。人間のやる事なんだから間違えたりすることもある。」とこれまた仏のような心持。

一円合わなくて残業させられている日本の銀行の方々が聞いたらびっくりしすぎて腰を抜かしてしまうのではないだろうか。でも、毎日どれくらい誤差が生じるんだろうか?それが積もり積もって一か月、三か月、一年となるとどのくらいの損失になるのだろうか?そんなんだからこの国の経済は、、、などと勝手に心配してしまう。

 

でも働く側にとってはとても働きやすいのではないだろうか?人間なんだから失敗するのは当たり前って考え方はとても寛容だし、はした金のことでとやかく言わないのはなんとも江戸っ子のような潔さだ。

 

 (スーパーでの四捨五入は首都のマドリードではほぼ皆無でした。グラナダやアンダルシアでも大手のデパートでは四捨五入はなかったので一部の話だと思って下さい)