スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

トイレットペーパー

私がスペインで付き合っていた彼は買い物の時当たり前のように荷物を持ってくれた。スーパーに買い出しに行くときは必ず一緒に行き、重いもの持つ係として重宝した。

しかし、一つだけ持ってくれないものがあった。

それは「トイレットペーパー」だ。

これだけは頑なに持つことを拒否された。なんでも「恥ずかしい」んだそうだ。

女物のバックだって持ってくれるのに、トイレットペーパーだけは持ってくれない。

恥ずかしい基準がよくわからない。「生理用品は?」と聞くと「生理用品は全然恥ずかしくないよ。だって僕の物じゃないと明らかにわかるかしね」と言う。

ますますよくわからない。

まぁ、本人が持ちたくないというのなら、トイレットペーパーは私が持てばいいので全く問題にはならない。軽いものとトイレットペーパーは私が担当し、その他のものは彼が持つ。一件落着だ。

 

ある日会社で、過去に備品の納品が間に合わず社員がスーパーに買いに行ったという話題が上がった。その時に買い出しに行った子が「トイレットペーパーをたくさん買う羽目になって凄く恥ずかしかった」と言ったのだ。

まただ。うちの彼氏と同じ思考回路の人間がここにもいた。

「24ロールも買わなくちゃいけなくて本当に恥ずかしかった」と言う彼女に

「一体全体何がそんなに恥ずかしいのか?」問いかけてみると

「まるで私がいっぱいウン〇する女みたいじゃないか!」

「きっと店員はこの子たくさんウン〇するのね~。と思っているに違いない」と言うのだ!

なんとも斬新な思考回路だ。

今まで生きてきて「トイレットペーパーの量」=「ウン〇の量」と思いをはせることはなかった。

「店員は絶対そんなこと思ってないよ!」と言っても彼女は「私が店員なら思うし、道ですれ違った人も思う」と一歩も引かない。

では、いつもはどうやってトイレットペーパーを買っているのか問い詰めると

「いつもは家族で買い物に行くから、私一人でこの量のトイレットペーパーを消費する訳ではないことが明確だし、車で行くから帰り道も恥ずかしくない」と。

なるほど、なんとなくだんだんわかってきた。

彼女にとっては「一人で」「大量のトイレットペーパー」というのが恥ずかしさの極みのようだ。

トイレットペーパーが恥ずかしいなんて、まるでウン〇もオナラもしないと公言していた一昔前のアイドルのようではないか。

しかし、普段の彼女はかなりきわどい下ネタが大好きで、更衣室でふざけておしりを出してきたりするような人なのだ。

羞恥心の在りどころを間違えている。

 

彼女の話を聞くまでは私の彼氏がただ意識過剰の変わり者なのだと思っていたのだが、そうではないのかもしれない。

「トイレットペーパー」=「ウン〇」と頭の中で直結して想像して恥ずかしがっている人間が一定数存在するという事実は私に衝撃を与えた。

それ以来、スーパーでトイレットペーパーを買うたびに店員の顔をじっと見つめてそっち側の人間かどうか確かめる私であった。