カレールー
日本は「いかに簡単に」「いかに楽に」「いかに短時間で」出来るようにと改良に改良を加えた商品で溢れている。
「日本って凄いね」とよく言われるが、私は
「日本人は面倒くさがり屋ばかりで、その面倒をなくすために一握りの人が頑張って開発している」だけなのではないかと思っている。
怠け者の私たちのために、快適に暮らせるように全力で取り組んでくれているのだ。
サランラップの切れ味や、袋の開けやすさなどありとあらゆる所に快適を求め追及する日本。
スペインの場合、便利になるための努力を誰もしてくれない。
「便利=良いもの」と思っていないのが原因なのかは知らないが「別にこんなところで急いでどうするんだ」「あったら便利だけど、なくても困らない」と面倒な事柄をしれーっと受け入れる懐の深い国民性なのだ。
このせいでスペインの洗濯機はいつまで経っても長時間回っているし、ガスレンジの火は自動で点いてくれない。(ガスをひねってからマッチやライターで火をつける)
超絶快適な国日本からやってくると初めは至る所で不便を感じる。
切れないラップにイライラし、永遠に終わらない洗濯機を壊してやりたい衝動に駆られる。
が、そのうち「まぁしょうがない」と諦め徐々に適応していく。
不便さを受け入れることができるか否かが海外で暮らせるかどうかのボーダーラインなのだ。
確かにラップが毎回きれいに切れなくても死にはしない。
ある日スペイン人にカレーを作ってあげたらとても気に入ってもらえた。
レシピを教えてくれと言われたので教えると、「カレールー」とは何だと聞いてくる。
「カレーを作るためのルーです。日本食材店で売ってるよん」と言うと
「そーじゃなくて、カレールーはどうやって作るのよ?ルーをわざわざ買わなくたって出来るでしょ?」と言ってくるではないか。
そんなことを言われても私には「悪いことは言わない。このカレーが食べたいならば素直にカレールーを買いなさい」と突き放すしか出来ない。
なぜなら私はカレールーなくしてカレーを作ったことがないからだ!
そういえば日本にはカレールーをはじめシチューのルーだの、回鍋肉の素だの、鍋の素だの、ありとあらゆる料理の素が売られている。それさえ使えば時短にもなるし料理が下手でもそれなりに出来上がる魔法の素だ。
味の決め手となるソースもたくさんあるし、レトルトや冷凍食品のレベルは世界一。
料理が得意でない人間にとってこんなにありがたいことはない。
しかしスペインではあまりそーゆーものがない。
ソースの種類も日本に比べるとグッと少ない。マヨネーズやトマトソースはたくさん売っているものの、家庭でその都度手作りする場合も多い。
レトルトとか冷凍食品もたくさんあるが、手料理のレベルを超えるものにはなかなか出会えないのだ。
「手料理の味を超えよう!」なんて企業努力も見当たらない。
もしかしたら手料理の味を超える気なんてさらさらないのかもしれない。
したがって忙しい平日は冷凍食品でやりくりしても、家族が集まる週末になると時間をかけてじっくり美味しい手料理を作る家庭が多いのだ。
手料理が一番美味しいスペインと、手料理を超えるクオリティの加工食品を有する日本。
どちらがいいのかはわからないが、日本の冷凍餃子とかレトルト食品の開発者の情熱と探求心をテレビで見るたびに、この情熱を他の所に向けたらいいのにと心で思う。