スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

暗黙のルール

お肉を買おうと市場に初めて行った時のこと、たくさんの人が乱雑に列を作るでもなくいる中で注文をするタイミングがわからなかったので暫くたたずんで様子をみることにした。

 

一人の人が注文をし終えると間髪いれず他の人が注文し始める。

これが繰り返されたので「誰かの注文が終わったら早い者勝ちで次の注文をした人の番になるのだな」と予想した。

正直とても手強い手法である。ここにいるおばちゃんたちに果たして勝てるだろうか?しかしよく見てみると店の人が次の人は誰?と聞くパターンもあって一体どのようなシステムなのか謎が深まるばかりであった。

 

すると、私の隣に居たご婦人が「この子ずっとここで待っているわよ」と声をかけてくれて私に注文させてくれた。無事注文が終わりご婦人にお礼を言ったら

「誰が最後?って聞けばいいのよ。その最後の人が終わったらあなたの番ってこと。で、次に来た人に誰が最後?って聞かれたら私が最後よって教えてあげればいいだけ。簡単でしょう?」と私がわからなかった暗黙のルールの説明をしてくれた。

なーるほどthe world。一見なんの秩序もないような集団が手際よく混乱もなく注文を繰り返せるのにはこんなルールが隠されていたのだ。

 

よく観察してみるとこの暗黙のルールはいたるところで発動していた。

列を作って並んでいるように見える銀行窓口の順番待ちでも、椅子に座って待っているお年寄りとかもいて、その人は自分の番が来ると列に割り込んでいく。

厳密には割り込んではいないのだが、ルールを知らないと割り込んでいるようにしか見えない。その人は銀行に入ったときに誰が最後か聞いていて、次の人が入って来た時に自分が最後なので列に並んでいなくてもあなたは私の後だよと確認し合っているのである。

確かに前後の人がわかっていればなにも列に並ばなくたってもいいのだ。なんて原始的にして画期的なシステムなのだろうか。

 

そして覚えたルールを実践したときに感じる「地元に溶け込んだ感」は半端なく、「これで私も現地人」と胸を張って市場へ繰り出すのである。