スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

ハイスペックG

語学学校の先生とG(ゴ〇ブ〇)の話になったのでGへの憎悪を熱く語ったのだが、いまいち共感を得なかったのでここに書き留めてみる。

 

ある日の授業中、Gの話題になった。

Gはスペイン語でCucaracha クカラチャ。(スペイン語にするとスペルの最初の文字がGではないのが残念だ) 私があいつへの憎悪を熱く語っていると

「気持ちの良い虫ではないのは十分承知だが、なにもそこまで憎悪しなくてもいいではないか」などと生ぬるいことを先生が言ってくる。あの気持ちの悪い物体が壁を登って飛んできたりするのは恐怖でしかないし、すばしっこくてなかなか始末できない最強の害虫が憎悪に値しないとは一体どこまで心優しいんだスペイン人!と一瞬己の心の狭さを反省しそうになったが、いやいやいや、やっぱり無理だ。Gを見つけたら最後、あやつの息の根を止めるまで仁義なき戦いは続くのだ!と息巻いて反撃すると

「ってか、Gは飛ばないでしょ!やっぱり他の虫と勘違いしているんじゃないの?」と言う先生。

な、な、なんと!スペインのGは飛ばないのか!?しかも動きもそんなに言うほど素早くないらしい。

 

実際、スペインのGはちょろかった。まず、Gとしての自覚が足りない。Gたるもの人間の気配を感じたら素早く隠れるのが基本中の基本だと思うのだが、スペインのGは隠れる動作が鈍い。隠れ方も雑だし「人間に見つかる=殺される」という危機感をまるで持ち合わせていないように見受けられる。

 

日本で人間に見つかるという事はGにとって死に値する。見つかった当の本人はもちろんのこと、一家一族皆殺しの大惨事を招くことにもなりうる。日本人との終わりのない戦いに勝つべく日本のGは著しい進化を遂げたのだ。ハイスペックGとなった日本のGとスペインのGではもはや同じ土俵で語ってはいけない程の差ができているのだ。

しかも、スペインには陽気なメロディで歌われるGの歌まである。日本のGが聞いたらきっと羨ましくてたまらないだろう。生まれた場所が違うだけでこんなに待遇が違うなんてGにとっても世の中というものは世知辛い。

もし万が一、来世でGに生まれ変わるような事態になったとしたらせめてスペインのGになりたいと神様に頼んでみようと思う。

 

Gと同じく、日本で独自に進化したのがカラスだと思う。スペインでは街中でカラスをほぼ見かけない。

「カラス なぜなくの カラスは山に~」と童謡で習ったように、カラスは普通山に居るのだ。「カラスの勝手でしょ~」と志村けんが替え歌をしたおかげですっかりカラスの生息地を忘れていたが本来は街ではなく山に居るべき生き物なのだ。

スペインのカラスはきちんと本来の生息地を守り山に居る。街ではなかなか見かけないのでスペイン人はカラスの生態を知らない。

 

車が走る道路にクルミをわざと落として車にひかせて中身を食べるなんてことをするし、いじめた人の顔を覚えて仕返ししたりするぐらい日本のカラスは頭がいいのだよとスペイン人に教えてあげたらみんなびっくりしていた。

「日本はカラスまで頭がいいのか」と褒められて私もまんざらではない。

ハイスペックGとハイスペックカラスがいる日本って最強だな。と無意味に得意げになる昼下がりであった。