スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

8月のダウンジャケットとピホ 

季節の変わり目の頃のスペイン人の服装は三者三様である。厚手のコートを着ている人もいればタンクトップの人もいる。人々の服装だけで季節を知ろうとするのは難しい。

 

マドリードは一日の中でも寒暖の差が激しいので一日を通して同じ服装でいることが難しい。

日本の春や秋のような長袖一枚でちょうどいい時期があまりない。

朝と晩、日が出ている時と日がない時、雨が降った時とやんだ時、屋外と屋内などで気温の差が激しいのだ。

太陽が出たら半袖やタンクトップで太陽が隠れたら上着を羽織る。まさに太陽と共に生きていると感じる。

 

8月に急に季節外れの雹が降り気温が一気に下がったある日のこと、夏の服装で震えている私の目の前をダウンジャケットのおじさんが通り過ぎた。

なんてナイスな服装のチョイスだろうか?

8月にそのダウンジャケットがすぐに出てくるなんて凄い。いくら雹が降ったからといって8月にダウンジャケットを着ようとは私だったら思わないが、目の前のおじさんの暖かそうなダウンジャケットは心底うらやましかった。

ダウンジャケットを着て雹が降る中を颯爽と歩く姿を見ていると8月だという事を忘れてしまいそうになる。

 

今でもあの時のダウンジャケットのおじさんの背中を覚えている。他人の目など気にせず我が道を行く服のチョイスがいたく格好良かった。

 

話は変わるが、服のテイストを見ればその人の属しているカテゴリーみたいなものが何となくわかったりする。

スペインでは特にその傾向が強いように感じる。

 

『PIJOピホ』と『PERROFLAUTAペロフラウタ』と『GAFAPASTAガファパスタ』を例に解説してみよう。

 

『PIJOピホ』と呼ばれる人々の典型的な服装はポロシャツにセーターを肩に掛ける石田純一のような服装だ。セーターを肩から掛けていなくてもポロシャツやシャツをinにした着こなしや髪型などから何となく一目でピホだとわかる。ラルフローレンやトミーヒルフィガーのポロシャツ率が高い。右寄りな政治的傾向の人が多い。

「ピホ」は裕福な社会階級の典型的な人のことを指す言葉だが、軽蔑っぽいニュアンスを含んでいるので使い方には注意が必要だ。

使用例その① 「どうしたの?今日はピホっぽいじゃん!笑」 お上品ねと褒めならがらもイジっている。

使用例その② 「あいつ超ピホじゃん!」 鼻持ちならないとディスっている。

出没場所:サラマンカ地区、チャンベリー地区やゴヤのエルコルテによくいる。

職業:医者、安定した職業

 

『PERROFLAUTAペロフラウタ』は常に犬を連れて通りでフルートを演奏するボヘミアンな生活を送っている人から発生した言葉。ヒッピー系の人を指す。

わかりやすいのはRASTAヘア(ドレッドヘア)の人。Pañuelo palestino(日本ではアフガンストール)と呼ばれる反全体主義の象徴ともいえるストールを巻いていたりもする。  ヒッピー系の服装で左寄りな政治的傾向が強い。汚れが目立たないような服装のため座り込んでのデモでもへっちゃら。

この言葉も比較的否定的な意味合いを含む。右の人が左の人を指す時に使ったりする。

出没場所:ラティーナ地区やデモをやっている所によくいる。

職業:アーティスト、クリエーター、または無職

 

『GAFAPASTAガファパスタ』は最新の文化的トレンドを高く評価し、モダンな服装をし、プラスチックフレームのメガネをかける傾向がある人。サブカルチャーに詳しく、うんちくをやたらと多用しがち。「僕文化人です!」みたいな人が多い。

例えるなら「世界丸見え!テレビ特捜部」のマシューみないな人。

出没場所:マラサーニャ周辺。前衛的なギャラリーのオープニングパーティに必ずいる。

職業:批評家、マスコミ関係

 

番外編『Los heavys』

ヘビメタファッションに身を包む人々。夏はバンドTで冬は革ジャン。

代表例はグランビアにいる双子のおっさん。マドリードで知らない人はいないぐらい有名なおっさんたち。

出没場所:グランビア。行けばかなりの確率で遭遇できる。

 

因みに、「ピホ」は誰もが知る形容詞となっているが、他のは地域や年代などにより使わない場合もあるのであしからず。そして基本的に「ピホ」も「ペロフラウタ」も「ガファパスタ」も悪口っぽく使うため直接本人に向かって使う時は勇気が必要です。