リスボンと衝撃のパン
スペインのお隣のポルトガル。
同じイベリア半島に同居しているだけあって距離的にも文化的にもスペインとかなり近い。言語はポルトガル語だが大抵の人はスペイン語を理解してくれるのでとても旅行しやすい。
今までに3回リスボンに行ったが、初リスボンは2005年。語学学校に通っていた時の一泊二日の遠足だった。
セビージャからバスで国境を越えリスボンまで向かった。
生まれて初めての陸路での国境越えだったのでドキドキしていたのだが、EU圏内はパスポートコントロールの必要もないようで素通りだった。
大きな検問所があるわけでもなく、川を越えるわけでもない為どこからがポルトガルなのかいまいちわかりにくい。
ただポルトガルの敷地にバスが侵入した後に携帯電話のキャリア(携帯電話通信会社)がポルトガルのキャリアに変わったよ!との知らせが携帯に届いたので国境を越えたのは確かである。
キャリアの電波によって国境を越えたことを知るとは、島国の日本では味わえない体験だ。
リスボンはポルトガルの首都だが、そこまで首都オーラがでていなくて慎ましい印象だ。コンパクトな街並みながら見どころはてんこ盛りで観光しやすい。
街並みもそこで暮らす人々もスペインと似ているようで似ていない。
スペインにいる人々となんら変わらない風貌だが、寡黙に働く姿はスペイン人とは何となく違う。
居心地がいいが切ない。何とも表現しにくい哀愁のような郷愁のようなベールが街を包んでいるような感じがするのだ。
まさに「サウダージ」
「サウダージ saudade」とはポルトガル語の中でも有名な単語の一つだと思うが、世界で最も翻訳しにくい単語ランキングで7位だそうだ。
https://www.todaytranslations.com/news/most-untranslatable-word/
意味は郷愁とか憧憬、思慕、切なさのようなものらしい。
因みに4位には日本語の「なあ」がランキングしているのだが、「なあ」についての説明が「日本の関西地方でのみ使用される日本語の単語で、発言を強調したり、誰かに同意したりする時に使う」となっている。
ってゆーか、「なあ」ってそもそも単語なのか?もっと他にもあるはずだ!
「わびさび」とか「メリハリ」とか「もったいない」とか。それなのに「なあ」って。「なあ」が出てきた瞬間にこのランキングの信憑性が薄くなるのでやめて頂きたい。
日本人の私がポルトガルで「郷愁」にも似たものを感じるのはポルトガル料理のせいかもしれない。
魚の「だし」の匂い。魚を焼いている匂いが、日本を思い出させるのだ。
ポルトガル料理の方がスペイン料理よりも和風寄りな感じがする。とにかく美味しく、日本人の口に合う味付けだ。
レストランの料理はもちろんのこと、B級グルメにしてもデザートにしても何を食べても美味しい。
何を食べても美味しいポルトガル料理だが、初めてリスボンに行った時に食べたパンは微妙だった。
味は微妙だがインパクトが凄すぎて忘れることができない。
地元のパン屋さんに入り適当にパンを買ったのだが、その一つのパンがやけに重かった。
一見しただけでは何のパンだかわからないのだが、その重さから中に何かが入っているのは明白だ。わからないものにかぶりつくのは抵抗があったのでパンを割って中身を確認してみた。するとパンの中には殻の付いたままの卵が丸ごと一つ入っていたのだ。
殻付きの卵が丸ごと一つ入っているパン
かじらなくて本当によかった。かじって食べなかった自分を思い切り褒めてやりたい。
恐る恐る殻を剥いてみると、ただのゆで卵だった。しかも何の味もついていないゆで卵。パンの中に入っているぐらいだからパンと一緒に食べれば美味しいのかも?と思い一緒に口に入れてみたものの、パンとゆで卵の味がするだけで相乗効果なんてものは得られない。
しかもパン生地はほのかに甘いのだ。ゆで卵との相性はいまいちである。
剥かなくてはいけない殻ごとのままの卵が入っている食べ物って食べ物としてどうなんだろうか?
これがありならパンの中に缶ごとサバ缶入れてもいいんじゃないだろうか?新しい料理ジャンルなのだろうか?
ずいぶん長い間私の中でこのパンの謎は解けぬまますっかり忘却の彼方へ押しやられていた。
しかし今回このブログを書くにあたり調べてみるとこのパンは「フォラール」と言い、ポルトガルでイースターの時に食べる伝統的なパン菓子なんだそうだ。
グッグったらこんなにあっさり出てきてこっちがびっくりした。
ただポルトガル在住の人のブログなどを見てみると皆さん私と同じく「殻付き卵」がパンに入っていることにはびっくりしているようだ。やっぱり殻付き卵入りパンは衝撃なのだ。