スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

サイン/ Firma

子供の頃、秘密裏にサインを練習していた。

だれかに求められたわけでも芸能人になりたかったわけでもないが、何となくかっこいいサインが書きたかったのだ。しかし苗字と名前の漢字のバランスがサインに適さないのか何度挑戦しても自分の思い描くサインにはならない。

唯一無二のくしゃくしゃーっとしたかっこいいサインがどうしても書けない。

筆記体でも挑戦したのだが、Tの大文字の筆記体がかっこよく書けず、今に至るまで「かっこいいサイン」というものを持っていない。

結局パスポートもカードもサインは普通に漢字のフルネームだ。

 

スペインで暮らしていた時もサインは全部漢字でしていたのだが、画数が多いためサインをする時に人より時間がかかってしまい、そのせいでじっとサインを凝視されることが多かった。

アジア系でもサインに漢字を使う人が少ないのは漢字の方が書くのに時間がかかるからだろうか?

アルファベットを使う国に住んだらサインもアルファベットにするべきなのかな?と思ったこともある。

漢字で名前を書いたところで誰にも読めないなら意味がないかも?と思ったが、そもそもアルファベットで書いてあったとしても何を書いてあるのかわからない ぐしゃぐしゃのサインが横行する世の中において「読める」必要はどこにもないのだ。

 

ちなみに私のスペイン人の元カレのサインは正式な名前ではなくあだ名のサインだった。身分証明書の本名とは明らかに違う名前がはっきりわかるサインだ。

例えるならば、東京太郎が本名なのにサインは「小次郎」

初めて見た時は冗談かと思ったが、別にこれでもいいらしい。

本人曰く、ずっと「小次郎」と呼ばれているのだからサインも「小次郎」でいいのだ!とのことだ。

そういえば友達のロサも本名はロサではなかったがサインはロサだった。

スペインあるあるなのだろうか?

それとも私がたまたま特殊な人たちに遭遇しているだけなのだろうか?

 

調べてみるとサインはイニシャルだけでもニックネームでも例えそれが「絵」であっても問題ないそうだ。毎回同じように書けるならサインとして機能するということらしい。

我が国日本でもイラスト入りの判子は実印としては認められないものの、認印、銀行印としては使用が認められている。

わかったところでイラスト入りの判子を作る気もサインをニックネームにする気もさらさらないが、元カレや友達のサインが特別特殊というわけではなさそうなのでほっとした。

 

「毎回同じように書けるならサインとして機能する」とあるのだから、同じサインを使い続けるのが定石だと思うのだが、私のスペイン人の知り合いは何年かごとにサインを変えていたと記憶している。

新しいサインをひたすら練習している彼を見て「へぇ~サインって変えていいんだぁ」と漠然と思っていたが、変えない方がいいに決まっている。

 

友達は旦那のサインをよく偽造していたが、(犯罪だが笑ってスルーしてほしい) 

ある日提出しているサインと違うと指摘され偽造がばれたかとビクビクしたことがあるらしい。よくよく調べてみると、旦那が何かの記念に一瞬だけサインを変えた頃に契約していたため、解約時も同じサインが必要だったのだ。

しかし当の本人の旦那ですらそのサインを覚えていなかった。

やはりサインはコロコロ変えるべきではないのだ。

 

やっぱり次回のパスポートの更新も無難に漢字のフルネームのサインにするとしよう。