スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

制服騒動

私がマドリードで働いていた免税店では制服が支給されていた。

制服といってもZARAや MANGOなどの服を皆でお揃いにしているだけの名ばかりの制服だ。この制服は年に二回変わるのだが、毎回毎回かなりの大騒動になる。

年齢は18歳から60歳まで幅広く、人種も様々、もちろん体系も様々、そして何より好みも様々な総勢16人以上の女子の集まり。全員が納得する制服に決まるまでの道のりは険しいのだ。

 

衣替えの季節(4月と10月)になると店長がZARAや MANGOなどの店から適当に何着か仕入れてくる。それをスタッフみんなであーでもないこーでもないと吟味するのだが、そこで毎回意見が対立する。

まず、第一の関門はパンツかスカートか問題だ。

ベテランのお洒落スタッフは毎回「スカートの方がエレガントだから」という理由だけでスカートを押してくる。しかーし!私たちの仕事はただ商品を売るだけではない!

商品の検品やらストックの整理やらでしゃがんだり踏み台に登ったりするのだ。スカートでは動きずらいではないか!とスカート反対派が声を上げる。

 

スカートの勝率を見てみると三回に一度くらいの割合なので若干スカートは分が悪いようだ。だが問題はスカートかパンツかという単純なことだけではない。

生地が薄いだの伸びないだの、色が気に食わないだの、店長が持ってきた服が可愛くないだの、文句とも言いがかりとも思える討論は続くのだ。

この制服選びにみんなが傾ける情熱は凄まじいものがあり、みんなそれぞれ自分が一番似合う服又は好きな服を全力で押してくる。

 

毎度毎度揉めるならいっそのことずっと同じ制服にすればいいのでは?と言ってみたことがあるのだが、全員から「楽しみを奪うな」と猛反対された。

なるほど。確かにこの衣替え騒動は半年に一度の一大イベントとして定着している。

こういうくだらない事、しかも年に二回もある出来事に全力で挑む馬鹿さ加減が仕事を長く続ける秘訣なのかもしれない。

しかし毎度のもめ具合に振り回される店長のストレスは限界に達しているように見えるので気の毒だ。

 

日本に帰国後もスペインへ行く度この古巣を訪れるのだが、毎回今期はどんな制服だろうか?といつも楽しみだ。

この制服はお局のごり押しで決まっただの、今回の制服はどこかのデパートの店員みたいだのと愚痴を聞くのも楽しい。

 

話は変わるが、18歳から60歳までの様々な体系の16人分の既製品をパッとすぐ揃えられるのがZARAをはじめとするファストファッションブランドの強みである。

豊富なサイズ展開、そしてターゲット層の幅の広さは天下一品。

ZARAにいたっては生まれた時から、いやママのお腹にいるときから老いていくまでZARAですべて賄えるのだ。驚きの商品展開である。

したがってスペインでは誰しも一枚はZARAの服を持っていると言っても過言ではない。さすが、スペインが世界に誇るスペインブランドだ。