スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

手書きの文字

スペイン人の書く文字は分かりづらい。学校の先生でさえ独特な個性を発揮した文字を書き、留学生を困らせる。

板書をしていてもスペルがよくわからなかったりする。

学校の先生は字が綺麗なはずだと思い込んでいたが、スペインの先生には当てはまらないようだ。

しかし、学校に通わなくなると手書き文字に遭遇することがぐっと減り、文字読解に苦労することもなくなっていった。

手書きの文字なんてバルのお勧めメニューぐらいでしかお目にかからないと安心していたが、デジタルの時代となった今でもポストカードやら、メモやらは手書きの為いつまで経っても文字解読に苦労する羽目になる。

 

筆記体が読みにくいのは当たり前だが、筆記体とブロック体を混ぜて書いたり、なかなか意表を突いてくる。

ブロック体の大文字Aを△のようにまるで三角形のように書く人や、小文字のm n u v wはどれがどれだか分からなく区別がつきづらい。

s とr はなぜか急に筆記体になったりならなかったするし、数字の1とか4とか7とか9とかも個性を主張しがちだ。

 

会社で同僚がメモを残してくれるのはありがたいのだが、文字が読みづらいためメモを細めで見つめ想像を膨らませる。

解読できた時は名探偵にでもなったように気分が上がる。

文字解読に苦労しているのは私だけなのか?と疑問を抱き他の人々に聞き込みしてみると、アルファベットを使う国の人は個性的な文字でも何を書いてあるか大体分かるようだったがアジア人は私と同じで苦労するといった人が多かった。

アルファベットを母国語として使っているか否かで結果は大きく分かれるようだ。

アルファベット圏の人はアルファベットなら個性的な文字でも解読できるのだ。

 

私も日本語なら手書きであっても大体読める。(掛け軸レベルの達筆は読めません)

しかし、私が手書きのアルファベットで苦労するように、外国人も手書きの日本語で苦労するという。

日本語が出来る外国人でも手書きの日本語の解読は難易度が高いと言っていた。

日本語は漢字やひらがな、カタカナがあるため外国人には特に難しいだろう。

 

しかも日本人の中にも文字が著しく個性的な人が存在する。

 

随分昔の話だが、働いていた店の店長が送った日報の文字が汚すぎて判別不能だと本社から苦情が入った時があった。

まだPOSシステムが導入されていなかった時代だった(バーコード管理されていなかった)ので毎日売上日報を本社にFAXしていたのだ。

うちの店長は少々変わった人で、ある日突然

「自分は元来左利きだったのに幼少の頃に親に治されたのだ!」

と言い張り、今日から左利きになると宣言をした。

左利きになろうがなんだろうが勝手にしてくれと思っていたが、なんと本社に提出する日報を左手で書き出したのだ。利き手の右手で書いた文字すら独特なのに、左手で書くなんてふざけている。

「今日は私が日報を書きます」と遠まわしに店長が日報を書くことを阻止しようとしたのだが、「慣れないといけないから僕が書くよ!」とやる気満々。

店長がその気なら誰にも止められない。慣れない左手でいつもの倍の時間をかけて書いた文字は漢字の偏やつくりのバランスがおかしい。ひらがなも「は」のバランスがおかしいせいで「し」と「よ」に見える。

店長が何を書きたかったか分かっている私であっても解読するのに苦労する暗号のような日報となっていた。

そりゃ苦情がくるはずである。

次の日もめげずに左手で日報を書いていたが、本社から「二度とやるな」とお達しがきたため店長の左手書きは永久に封印されることになったのであった。

 

他の人が読めなければ文字は文字として機能しないということを学んだ。