グラナダの魔法
スペインで一番好きな街は長く住み慣れたマドリードだが、
二番目を上げるとすれば断トツでグラナダとなる。
グラナダには一年居たが、フルタイムの正規の仕事さえあればそのままずっとグラナダで暮らしてもいいと思えるくらいグラナダが好きだった。
グラナダの良い所を色々書き出してみよう。
家賃が安い。物価が安い。
がっつり美味しいタパスが無料で付いてくる。
生活圏内がほぼ徒歩のみで済む。
午前中の公園に、働き盛りの中年のおじさんがベンチで日光浴をしてる。
(会社には行かないのだろうか?)
誰も走らない。急いでいる人もあまり見かけない。
(走るのはスリぐらいらしい)
やたらとヒッピーがいる。(外人率高し)
水が美味しい。
Tetería (アラブのお茶屋さん)がたくさんある。
歩いていれば知り合いに会える。
お金がなくても気にならない。
アルハンブラ宮殿のせいか、サクロモンテのせいか、
「哀愁」という言葉がよく似合う。
イスラム文化が色濃く残り、異国情緒溢れる素朴な街。
「何もしないことに罪悪感を感じない街」
それがグラナダ。
バックパッカーの若者が予定していたより長くグラナダに滞在するパターンを何度も目撃したことがある。
アジアからヨーロッパに着き、物価の高さに疲弊していた者にとってこの街は天国だ。
食べ物も美味しいし、酒も安い。
街中どこでも「せんべろ」だ!(千円でベロベロに酔っぱらえる)
一日が、二日、三日となり仕舞いには語学学校にまで通い出してしまった人もいた。
それだけグラナダは魅力的で居心地が良いのである。
あの街は魔法がかかっているのではないか?
と私は秘かに疑っている。
誰であっても受け入れられる寛容さがあるのと同時に、腑抜けにされる魔力もある。
なんだか別世界、パラレルワードに入り込んでしまったような感覚だ。
独特な空気感の中で生活していると、みな少し時間の感覚が狂ってくるようで、
「ラーメンを作る」と言った友達はスープを作るといって豚骨を買ってきた。
すぐ食べれると思ってウキウキしていたのに、そこから作るのかと気が遠くなる。
「豆腐を作る」と言って「にがり」を採りにマラガの海へ行ってしまった友達もいる。
留学生だったから時間があったのだとは思うが、セビージャでの留学時代より時間がゆっくり流れていた。
グラナダは本当に一日24時間だったのだろうか?
一年グラナダで暮らしたが、もっと長い間暮らしていたような気がしてならない。
何をしてもいいし、何をしなくてもいい自由さ。
まともでも、まともじゃなくてもグラナダは受け止めてくれる。
魔法でもなんでもいいから、またいつかグラナダで暮らしてみたいなぁと思うのだ。