スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

民間療法

スペインでよく飲まれるハーブティーマンサニージャは日本だとカモミール茶と呼ばれている。

このハーブティーは何にでも効くと信じられているため、胃腸の不調時、体調不良の時など様々な時に飲めと勧められる。

確かに胃もたれをしている時などに飲むと心なしかすっきりする。

 

昔まだ全然スペイン語が分からなかった時、風邪のせいでのどが痛いのだと身振り手振りで説明したら

「té con miel」を飲めと言われた。

Té はお茶(紅茶)だとわかったが、mielがわからない。

するとジェスチャー大会が始まった。

「ブーン」と何かが飛んでいるジェスチャー

そして何かが腕にとまった瞬間バチーンと腕をたたく。

「蚊?蚊なのか????」

「お茶に蚊?????」

 

蚊のことを言っているとしか思えないジェスチャーだが、なぜお茶に「蚊」なのか?

私が疑った顔を見せると、腕をたたくジェスチャーをして「これだよ!」「信じて!」と何度も何度も同じジェスチャーを繰り返してくる。

他にジェスチャーのバリエーションはないらしく、ヒントはそれ以上増えない。

私が「蚊?」と聞いても相手のスペイン人は日本語がわからないので正解かどうか確認できない。

 

堂々巡りで拉致が開かないので、蚊をどうにかしてお茶に入れて飲む漢方みたいなものなのかなと自分に言い聞かせてその場を去ることにした。

 

辞書で調べたら「miel」はただの「はちみつ」だった。

「紅茶にはちみつ」なんてシンプルな!

のどが痛いときに「はちみつ」というのは世界共通なんだ。

日本でも「はちみつレモン」とかあるもん。

こんなに簡単なことがわからなかったなんて。

意味不明なジェスチャーに引っ張られすぎた。

 

だいたい、なんで腕をたたくんだ!蜂が腕にとまってたたくなんて。

「ブーン」だけを繰り返してくれていたらきっと「蜂→はちみつ」という推理にすぐたどり着いただろうに。

腕をたたく動作のせいで「蚊」以外の選択肢がなくなってしまったのだ。

 

注意してみるとスーパーでは「manzanilla con miel」はちみつ入りカモミールティーのTパックがたくさん売られていた。

ハーブティー+はちみつ。最強の組み合わせだ。

のどが痛くなくてもおいしそうだ。

 

そして、ものもらいが出来たときはマンサニージャの出がらしのTパックを目に当てろと言われたこともある。

 

民間療法というか昔ながらのおばあちゃんの知恵というか、そーゆーのがスペインは多い。

マンサニージャについてはハーブティーなのである一定の効果があるように思えるが、根拠の分からない迷信のようなものもある。

 

お腹が痛く下っていたので相談すると、

コカ・コーラを飲め」と勧められた。

コカ・コーラが下痢や胃腸炎に効くと言うのだ。

 

私が子供の頃は「コーラを飲むと骨が溶けるから、たくさん飲んではいけません」

と言われていたのに!

「骨が溶ける」という言葉を信じ、純粋な私はのどに魚の骨が刺さった時に1.5リットルのコーラを一気飲みした。

もちろん、骨が溶けるわけはなく、ただただゲップに苦しみ気持ち悪くなるだけだった。

 

お腹が下ってコーラで治す。まったく理解できない。

「コーラを飲みすぎてお腹を下す」ならわかるけど、コーラで治るはずがない。

コーラ療法に疑問を抱いた私は素直に病院に行くことにした。

民間療法的なものに頼らず、ここは科学で!と病院に行ったのに

「白いご飯を食べれば大丈夫」と薬も出さずに帰されたのだった。

 

お医者さんも民間療法。

「信じる者は救われる」

「郷に入っては郷に従え」

の言葉を繰り返し心の中で唱え帰宅の途に就く冬の昼下がりであった。