スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

タトゥー

アルファベットを使う国の人達にとって漢字はミステリアスで魅惑的な文字の一つとして人気がある。

 

それゆえ漢字のタトゥーやTシャツなど懐かしい母国の文字をスペインの街角で思いがけず見かけることがあるのだが、デザインだと思っているので何と書かれているかなどあまり気に留めていない場合が多い。

 

日本でも昔から英語で書かれた意味不明なデザインの服があるので、よそ様の国を馬鹿にできないが何故商品化する前に確かめないのだろうか?とよく思う。

 

意味不明な漢字が多い中、胸元に大きく「」と印刷されているTシャツを着たぽっちゃり気味のスペイン男子。

」の文字と彼のふくよかな胸の位置がばっちり合っているため、デザイナーの確実な意図を感じる。わかる人にはわかるパターンだ。

 

間違った漢字でも意味不明でも洋服ならまだましだ。

残念なのはタトゥーでの失敗。これが意外と多いのだ。

まぁ本人は失敗だと気づいていないパターンが多いので、その人たちが漢字の国に行かないことを願うばかり。

 

スーパーのレジ係の女の人は首に「」と彫ってあった。それを見たとき「見ればわかるよ」と思ったと同時に「いや、あえて女と彫っているということは実は男だったのか?」などといらぬ深読みまでしてしまった。

 

手首に「生活」やら、腕にでかでかと「」とか。

何をどう調べて何を思って彫ったのか?といつも見入ってしまう。

 

ロシオ」と彼女の名前だと思われる名前を彫っているつもりなのに逆さに彫られているのを見た時は切なかった。

 

野沢直子の旦那のボブも娘の名前の「真珠」を逆さに彫られていた。あれと同じだ。

嫁が日本人であっても悲劇は避けられないらしい。

 

「僕のタトゥーを見て彼女に説明してもらってもいいかな?」と頼まれたことがあった。

 

彼の背中には大きく「つづく」とひらがなが彫られていた。

ひらがなのタトゥーはとても珍しい。

漢字はスペインでも(意味はわからなくても)認知されているが、ひらがなは日本好きくらいにしか認知されていない。

それゆえ「つづく」のタトゥーは彼の周りで日本語として認めてられないらしくみんなから「タトゥー失敗された」と思われているそうだ。

彼女も失敗だと思っているのが悔しいとのこと。

 

「昔から日本のアニメが大好きで、楽しみに見ていたんだ。

毎回終わりに「つづく」って出てきてさ。

Continuará(英語だとto be continue)って意味なんでしょ? 

まだ終わらないんだ!まだ続くんだ!って毎回ワクワクして次が待ち遠しかったんだぁ。」

「だから僕の人生もずっと「つづく」って意味を込めてこのタトゥーを彫ったんだ。」

 

なんとも心温まる話なんだろうか。感動しすぎて言葉にならない。

つづく」のたった3文字にこんなに素敵な意味を見出せるなんて。

 

日本人のお墨付きをもらえた彼はとても満足そうな満面の笑みで去っていった。

彼の人生がこの先もわくわく「つづく」ものとなりますよーに!