スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

エレーナ

セビージャで語学学校に通っていた時、エレーナというアルゼンチンの女性と二人暮らしをしていた。

語学学校経由で契約した家だったのでシェアハウスというより、どちらかというと居候に近い立場だった。

 

居候なので、エレーナのルールに従わなくてはならない。

常識の範囲内のルールが多かったので特に問題はないと思われたが、一つだけ納得のいかないルールが存在していた。

それは洗濯機を勝手に使ってはいけないのだ。

「洗濯は二人分まとめて私がやるから洗濯機はいじらないでね」としょっぱなに言われたのだが、洗濯してくれるなんて優しい人だと思っていた。

ところが二日経っても三日経っても洗濯をしてくれる気配がない。恐る恐るいつ洗濯するのか聞いてみたら「洗濯は週一回よ」との返答。

 

慢性水不足気味の国なので「水を大切に!」がモットー。

とはいえ、一週間に一度では洋服の在庫が尽きてしまう。しょうがないので下着やTシャツなどは手洗いでしのいだ。

でも夏はいいけど冬はつらい。

 

スペインの南、セビージャにも冬は来る。

この町はみな暑さ対策にしか興味がないらしく、冬の暖房が手薄だった。

確かに、マドリードや東京に比べたら冬が短いしそこまで気温も下がらないが冬は冬だ。

12月からの三か月だけ我慢しろと言われたが、我慢する意味が分からない。家の暖房はリビングにあったデロンギのオイルヒーター一台のみ。

 

私が過ごしたその年のセビージャは10年に一度の寒さと言われていた。

一台しかない暖房を独り占めするわけにもいかないので私は内緒で小さな暖房を買って自分専用に使っていたのだが、電気代が跳ね上がったせいでエレーナにばれて怒られた。

うっうっ。。。泣 暖をとって怒られるなんて。。。

 

私が異常に寒がりなのだろうか?

私がダウンを着ているその横で学校にビーチサンダルで来る北欧美女。

彼女曰くこんなの冬じゃないとのこと。

確かにあなたの国の冬に比べたらそうだろうけど、いくらなんでもビーサンはないだろう。見ているだけで寒くなる。

 

ふくよかな体系のエレーナに「日本人は細いから寒がりなんだ」と言われたけど、エレーナが夜になると唯一の暖房を部屋に持ちこんでいることを私は知っていた。

やっぱり寒いんじゃないか!

 

体系というか、体質の問題なのか確かにアジア人の方が厚着をしているイメージがある。

欧米の人は基礎体温が高いのだろうか?

寒いというのにガラガラ窓の開いたバルで日本人留学生同士肩を寄せ合ったあの冬。

セビージャなのに凍えていた思い出ばかりである。

 

エレーナはアルゼンチン出身なので、アルゼンチンの友だちも多かった。

私は知らなかったのだがアルゼンチンはラグビーが盛んらしい。

セビージャにもアルゼンチン人だけのラグビーチームがあるらしく、エレーナはよく応援に行っていた。

我が家のキッチンには彼らがセミヌードになったカレンダーが飾られていた。

筋肉隆々、全身タトゥーだらけでセクシーなポーズ。

素人特有の気恥ずかしさあふれるカレンダーを毎朝拝んでいたのでエレーナに連れられラグビー観戦に行った時には昔の彼にでも会っているような錯覚に陥った。

 

エレーナの女友だちは皆ふくよかで、胸がとても大きい。

小さな子供に紹介されたとき、子供に年齢を聞かれたので、

「ママと同じくらいよ」と言ったら、目を丸くして私の胸を凝視。

そして「ポルケー?」(なんで?)と一言。

 

この子にとって大人の女性=胸が大きい、となるのだろう。

大人とは胸の大きさで決まるとすら思っていそうな目をしている。

私の胸と周りのアルゼンチン女性の胸を交互に見続ける子供に

「胸がなくても大人です」と説得するのは大変だったが、体を張って世の中の多様性というものを子供に教えることができて私は嬉しい。(泣)