スペインに惚れました

10年暮らした愛しのスペイン私の独断と偏見に満ちた西方見聞録

トイレ

日本を出て他の国に行った時にほぼ全ての人が感じる「日本のトイレの素晴らしさ」

当たり前だと思っていたことが当たり前でなくなった時に人は初めてその偉大さに気づくのである。

 

スペインは公衆トイレがとても少ない。公園にもなかなかないし、地下鉄の駅にもほぼ設置されていない。たまに道端に公衆トイレボックスがあるのだが、入るのが恥ずかしいと思われる場所にあったりする。犯罪などの治安面で公衆トイレが少ないそうだが、とても不便である。

では、外出時にどこで用を済ませるかというとバルまたはカフェテリアである。バルはどんなに小さな村だろうが必ずある。バルではコーヒーが飲め、ビールが飲め、公衆電話があり、タバコが買え、そしてトイレがある。朝から夜まで休まず空いている所が多いため本当に便利だ。バルなくしてスペイン生活は成り立たない。

だがバルにあるからといって全てのバルが簡単にトイレを使えるようになっているわけではない。古いバルではトイレに鍵が掛かっていてトイレに行きたい人は店員に鍵を借りなければトイレに行けない所もあるし、スタバやマックなどでは暗証番号を入れないと入れなかったりする。

マナーとして、トイレを借りるときはコーヒー一杯くらい頼むのがスペインの常識だ。

 

さて、トイレが見つかったといって安心してはいけない。紙がないトイレなんて序の口で便座がないトイレや、鍵が壊れているトイレ、流れの悪いトイレなどなど試練はたくさんやってくる。

女子トイレで便座がない。どーしてこんなことになるのだろうか?

和式ではなく洋式なのに座る便座がないのだ。便座がないトイレは珍しいものではなく、スペインに生活していれば日常的に遭遇する代物である。ではどうやって使用するのかというと、答えは単純明快、「中腰で用を足す」のである。この中腰トイレスタイルはとてもメジャーでたとえ便座があっても信用できないため外での使用は常に中腰スタイルという人が多い。背の低い私にとって中腰で足をプルプルさせながらの用足しはなかなかハードであった。

鍵が壊れているトイレも曲者。片手で開かないようにドアを押さえながら用を足す。スペインのトイレの設計はとても斬新で便座からドアがやたらと遠かったり、トイレットペーパーが背面にあったり、とにかく創造を遥かに超え、人に優しくない。

電気は一定時間しか点灯しないところが多く、用を足している途中で必ず暗くなる。

想像してみて欲しい、片手でドアを押さえながら中腰で用を足し、パンツをあげている最中に暗くなるトイレ。

トイレ一つにこんなに物語があるとは日本に暮らしていたときには夢にも思わなかった。

 

「トイレにトイレットペーパーを流さないで下さい。」

違和感を覚えるこの張り紙。日本の場合、

「トイレにトイレットペーパー以外を流さないで下さい。」となる。

トイレが詰まるからトイレットペーパー以外は流さないでね。ってこと。それは理解できる。

だが、スペインでたまに見かけるのは「トイレットペーパーを流すな」の張り紙だ。

初めは私のスペイン語の読解力の問題だと思っていた。が、何度読んでみても「何も流してはいけない」のだ。スペイン人に聞いてみたところ、

「トイレの排水管が細くて詰まってしまうことがあるから紙は流さないでゴミ箱に捨てるのよ。」とびっくりな回答をさも当たり前のように返された。

注意してみると「流すな!」の張り紙がしてあるトイレには大きめのゴミ箱がありトイレットペーパーがたくさん捨てられている。なかなかな衝撃映像だがトイレが詰まったら大変なので従うしかない。でももし万が一、ここで大がしたくなったらどーするのだろうか?想像するだけで滅入ってくる。

 

なかなかハードなスペインのトイレ事情だが、有料のトイレが多いヨーロッパにおいて無料のトイレをたくさん提供してくれているのだから少しは我慢するしかない。

 

成田空港で日本人サイズの高さの便座に座った瞬間に「おかえり」と言われているような気持になり、温かい便座につい「ただいま」と言ってしまいそうになりながら日本にいる実感を味わうのだ。